かつて里山は、人と野生動物がほどよい距離感で暮らしてきた場所でした🌳
森があり、畑があり、人の営みが静かに循環している、そんな環境はホンドギツネにとっても比較的落ち着いて暮らせる場所だったはずです🦊
けれど今、その里山は少しずつ姿を変え、必ずしも安全とは言えない場所になりつつあります。
ここでは、ホンドギツネの視点から、その理由を見ていきましょう😊
🌱 里山が変わってしまった理由
開発による生息地の分断 🏠🌲
宅地開発や道路整備が進むことで、森や農地は細かく分けられ、キツネたちの行動範囲は分断されてきました。
移動しようとすると道路に出ざるを得ず、命の危険が常につきまとうようになっています。
かつては一続きだった森が途切れることで、餌場や巣穴への行き来も難しくなっています。
🌾農地の減少
1975年に約557万ヘクタール あった全国の耕地面積は、近年では約424万ヘクタールにまで縮小しています。
およそ24%減少、面積にすると約133万ヘクタール。
これは東京都のおよそ6倍分(※岩手県と同じくらいの面積)の農地が、この半世紀で姿を変えた計算になります。
キツネ目線だと、農地の減少は「餌場が減る」だけでなく、畦・水路・土手みたいな移動の場所が途切れていくのが痛いところです。
🌳森林の面積
一方で、森林全体の面積は約2,500万ヘクタール前後 と、50年規模では大きな増減は見られていません。
ただし実際には、道路や宅地開発によって森が”減る”というより 細かく分かれる 変化が進んでいます。(2022年度の森林面積: 約2,497万ha)
つまり、
農地は減り、森は刻まれ、動物たちの移動経路や行動圏は、目に見えないかたちで途切れてきました。
面積の数字以上に、「連続していた景色が分断されてきた」ことこそが、野生動物にとって大きな変化だと言えます。
⚠️[重要]森林が増えている!という話にご注意
ここでは、とても簡単に説明します。
森林面積に大きな減少が見られない背景には、人工林の増加があります。
現在、日本の森林のうち約4割が人工林、約6割が天然林です🌳
一見、減った森を補っているようにも見えますが、人工林の主な目的は建築用木材の生産です。
スギ・ヒノキ・カラマツなど特定の樹種を植えた森は、下草や木の実が少なく、動物にとっては隠れ場所や通り道にはなっても、繁殖や定住には向きにくい環境になりがちです。
人工林が悪という話ではありません。
ただ、その結果、森の面積は残っていても中身は単調になり、倒木や実りが減ることで小型哺乳類や鳥が暮らしにくくなる一方、適応力の高い動物が残りやすいという生態系に大きな偏りが生まれています。
🏹 狩猟圧や有害駆除の存在
ホンドギツネは原則として保護対象ですが、農業被害や感染症リスクを理由に駆除されることがあります。
歴史を振り返っても、人の都合による捕獲の圧は、キツネたちの数や行動に影響を与えてきました。
今もなお、人との摩擦の中で命を落とす個体がいます。
📊一部の研究データ(海外)によると、日本国内でキツネが捕獲された数は、1997年以前は年間60〜100頭程度が捕獲され、その後急減し1999年には一桁台(7頭まで)に落ち込んだという推移を示す例もあります。
岡山県では、近年2年間で約 5,000頭のキツネが捕獲された(駆除活動)という記録があります。※農林水産省のデータですが、具体的な年代は不明でした
🦝 外来種との競合
里山には、アライグマなどの外来種も入り込んできています🦝
巣穴や餌を巡る競合だけでなく、病気を媒介する存在としても影響が心配されています。
野生化した犬や猫だけでなく、人為的に持ち込まれた動物たちが、キツネの暮らしに影を落としています。
🐈 野良猫
全国の野良猫:およそ100万〜200万頭(飼い猫の10〜20%程度と推定されています)
🐕 野良犬
令和6年の一年間(2024/4/1〜2025/3/31)に、所有者不明として行政に引き取られた犬:17,399頭
🦝 アライグマ
令和2年(2020年)に全国で9.6万頭超を捕獲 ※ 環境省データ
🦠 見えずらい脅威たち
🧬 病気の広がり
疥癬や寄生虫などの病気は、キツネたちにとって深刻な問題です。
体力を奪われ、毛が抜け、やがて衰弱していく姿は、決して珍しいものではありません。
本州でも確認例が増えていて、里山においても無視できない脅威になっています。
🔹 寄生虫(エキノコックス)
北海道におけるホンドギツネの寄生率は約30〜40%前後と推定される。
人の感染例:1999〜2018年で約425件の感染報告、年間平均 約20件、年間 3〜4人の死亡例あり。
🔹 疥癬
世界基準では、野生のキツネで感染率が0.1〜12%程度と推定される調査結果があり、学術的な調査では、感染した個体の死亡率が21〜100%の範囲という報告がある。
🚗 交通事故という現実
夜行性のキツネは、夜道を移動します。
そこには、車との衝突という危険が待っています。
特に夜間、道路に出た瞬間が命の分かれ道になることも少なくありません。
(国道:7万件 高速道:5万件)
そのうちキツネやタヌキなどの中型動物が全体の約58%を占めています。
☠️ 農薬や毒物の影響
農薬や殺鼠剤が間接的にキツネに影響を与えることもあります。
餌となる生き物が減ったり、食物連鎖を通じて体内に蓄積されたりすることがあります。
違法な毒餌が使われた例もあり、知らぬ間に命が奪われるケースも起きています。
⚠️日本でも、農薬や殺虫剤を混ぜた餌による違法な毒餌事件は実際に起きています。
2019年には東京都で、殺虫剤「メソミル」を含ませた米でハトを毒殺したとして逮捕者が出て、鳥獣保護管理法違反として報じられました。
また北海道では、自治会の回覧で「毒薬の使用を控えるように」と注意喚起が行われることもあり、地域レベルでも問題として認識されています。
全国統計としての件数は公表されていませんが、見えにくいかたちで命が奪われる事例が現実に存在していることは確かです。
🏭 人工物がつくる新しい風景
🚥 道路と照明が与える影響
道路は物理的な壁になるだけでなく、照明や騒音によって夜の環境そのものを変えてしまいます。
キツネは強い人工光を避ける傾向があり、明るく照らされた場所は通らなくなります。
その結果、移動できる範囲がさらに狭まり、行動の自由が奪われていきます🐾
🪧 看板や標識との関わり
道端の看板や電柱は、キツネにとっては縄張りの目印になることがあります。
尿や匂いを残す場所として使われる一方で、人の気配を感じ取る対象にもなります。
安心と警戒、その両方を抱えながら、キツネは人工物と向き合っています。
🕐 キツネの時間と人の時間
ホンドギツネは基本的に夜行性ですが、それは人を避けるための知恵でもあります。
人の活動が少ない時間帯を選び、静かに動くことで衝突を避けてきました。
ただし、環境次第で昼間に活動することもあり、生活リズムはとても柔軟です。
都市ではより深夜型に、過疎地では自然のリズムに寄り添う形で、生き方を調整しています。
🦊🌳 おわりに:里山という場所を見つめ直す
里山は今も、美しい自然が残る場所です。
けれど近年は、開発や人工物が増え、人の生活リズムの影響を強く受ける場所にもなっています。
キツネたちは、その変化を受け入れながら、静かに、したたかに生きています🦊
身近な自然の中にいる隣人として、その存在に目を向けることが、ともに生きる第一歩なのかもしれません😌🦊

